「人を育てること」と「自己効力感」の関係について

「なんで私の言うことを聞いてくれないんだろう?」

「何度も何度も同じことを言っているのに、なんでできるようになってくれないんだろう?」

「いったいどうしたらいいんだろう?」

子育て、教育、OJT(On-the-Job Training)。

親、先生、上司あるいは経営者。

人を育てる人には、悩みが多い。

特に、自分に成功体験があればあるほど、うまくいかない時の悩みは大きくなる。

「なぜあの時はうまくいったのに、今回はうまくいかないのか?」と。

ある子育て中のお母さんは、「もう!どうしたらいいのよ!」と匙を投げそうになっている。だが、匙を投げるわけにはいかない。だから悩む。

ある生徒を持つ先生は、「他の子とどこが違うんだろう?」と考え込んでいる。だが、その子はその子でしかない。他の子とは違う。だから悩む。

ある部下を持つ上司は、「こいつダメだな」と見切りそうになっている。だが、部下を変えてくれ、と言うわけにもいかない。だから悩む。

ある従業員を持つ経営者は、「何で私の言う通りにできないんだ!」と苛立つ。だが、一向に行動は変わらない。結果も変わらない。だから悩む。

『自己効力感』という言葉がある。

自己効力感とは、「自分の行為によって望ましい結果を生み出すことができる」という信念である。
〜『激動社会の中の自己効力』アルバート・バンデューラ(金子書房)より〜

人を育てる、という場面において、自己効力感は大きな役割を果たす。

そしてその自己効力感は二つある。

「育てられる側の自己効力感」と、「育てる側の自己効力感」である。

人を育てる、という場面において、「育てる側の自己効力感」の重要性はかなり大きい。

なぜならば、「育てる側の自己効力感」が、「育てられる側の自己効力感」に大きな影響を与えるからである。

例えば親子関係であるとすれば、

親が「私の行為によって、“この子が育つ・成長する”という望ましい結果を生み出すことができる」という信念を持っているとする。すると、親はこの信念を持って我が子に接することができる。その結果、子どもは「私の行為によって、“私が育つ・成長する”という望ましい結果を生み出すことができる」という信念を育めるようになる。

逆に、

親が「私の行為によって、“この子が育つ・成長する”という望ましい結果を生み出すことはできない」という信念(諦め)を持っているとする。すると、親はこの信念(諦め)を持って我が子に接してしまうことになる。その結果、子どもは「私の行為によって、“私が育つ・成長する”という望ましい結果を生み出すことはできない」という信念(諦め)を育んでいくことになる。

以上の例は、とても単純化しているし、実際にはこんな短絡的な関係でないことは確かだ。

子どもは子どもとして、生徒は生徒として、部下は部下として、従業員は従業員として、自ら「自分の自己効力感」を高めていくことはできる。必ずしも、いい親、いい先生、いい上司、いい経営者を必要とするわけではない。

だがそれでも、

人を育てる人は、すべからく「自分の自己効力感」を高い状態に保っておくことを大切にすべきである。

なぜならば、そうすることは、自分にとっていいこと(自分よし)であり、相手にとってもいいこと(相手よし)であり、周りの人たちにとってもいいこと(世間よし)であるからだ。

子育て、教育、OJT(On-the-Job Training)。

親、先生、上司あるいは経営者。

人を育てる人は、すべからく「自分の自己効力感」を高い状態に保っておくことを大切にすべきである。

「相手の自己効力感」を高めよう、高めようとする前に、「自分の自己効力感」を高めることに意識を払うべきである。

「なんで私の言うことを聞いてくれないんだろう?」

「何度も何度も同じことを言っているのに、なんでできるようになってくれないんだろう?」

「いったいどうしたらいいんだろう?」

そういう悩みを持つことは大切だ。

だが、そうやって悩み続けた結果、「自分の自己効力感」を低下させてしまっては元も子もない。

人を育てる人は、すべからく「自分の自己効力感」を高い状態に保っておくことを大切にすべきである。

「私には育てられない」

そう自分を責めても仕方がない。

一方で、「こいつがおかしい」

そう相手を責めても仕方がない。

もちろん、今後、二度と関係しない人であれば、スパッと相手を見切ることも一つの方法かもしれない。

だが、相手が「毎日毎日、自分が関わらざるを得ない人」であるならば。家庭、学校、会社、あるいは地域などで、「毎日毎日、自分が顔を合わさざるを得ない人」であるならば。

自分を責めても、相手を責めても。どちらにせよ「よくない状況」は変わらない。そして「自分の自己効力感」は低下する。

「自分の自己効力感」の低下は、下手をすると、他の多くの人への接し方すらをも変えてしまう可能性がある。

自分を責める人は、「自分に自信のなさそうな人」になっていく可能性がある。

相手を責める人は、「なんでも人のせいにする人」になっていく可能性がある。

人を育てる人は、つねに「自分の自己効力感」の状況に気を配る必要がある。

人を育てる人は、すべからく「自分の自己効力感」を高い状態に保っておくことを大切にすべきである。

そしてそのための鍵は、「分けること」「区別すること」にある。

どっひー &sing

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