余人をもって代えがたし

祖父は戦争には関わったが、戦場には行かなかった。

通信技術者であった祖父は、終戦まで召集されることなく、満州や日本の通信網の整備に駆け回っていたそうだ。

周りの人たちが次々と戦場へ召集されていく中、祖父が召集されなかった理由は次の一点だったらしい。

余人をもって代えがたし

私は、この言葉を何度も何度も祖父から聞かされて来た。

子どもだった私は、「そうか。将来、自分が戦場に召集されないためには、他の人にはできない何かを身につけておかないとダメなんだな」と思っていた。

だが、大人になっていくにつれ、わからなくなった。

余人をもって代えがたし

とは、どういうことなのか?

人は誰しも、余人をもって代えがたし存在である。

にも関わらず、あえて余人をもって代えがたし存在になるとは、どういうことなのか?

私は公認会計士だ。公認会計士の資格を取れば余人をもって代えがたし存在になると思っていた。たが、いざ公認会計士になってみると、日本には3万人以上の公認会計士がいる。職業人の数という点から考えると、果たしてこれで私が余人をもって代えがたし存在と言えるのか?

日本の中で、世界の中で、唯一無二の存在になること。ナンバーワンを目指すこと。それはそれで大切なことだ。だが、唯一無二でなければならない、ナンバーワンでなければならない、と思い込むことは、自分を見失うことになるのではないか?あるいは、他人を過度に見上げたり見下げたりすることになるのではないか?

余人をもって代えがたし

いまだ答えはわからない。

だが、大切なことは、”誰から見て”余人をもって代えがたし存在となるか?だろう。

自分から見れば、自分自身は当然のごとく代えが効かない。両親から見ても同様。

では妻から見たらどうなのか?

子どもたちから見たらどうなのか?

地域の人たちから見たら?

会社の人たちから見たら?

国家から見たら?

地球から見たら?

facebookの友達から見たら?

我以外皆我師也

リーダーとは、この世界の中で、いまの時代の中で、その持ち場、持ち場ごとにいる、余人をもって代えがたし存在である、と思います。

TAKU &sing

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