昨日、デザインシンキングによるプロトタイプづくりを体験した。
私の友人が中高生向けに実施しているワークショップに参加させてもらったのだ。使った教材は、スタンフォード大学d.schoolの公式教材「The Wallet Project」などなど。
教材のイメージは、こんなの。
「The Wallet Project」のワークショップのミッションは、約2時間で、”相手の”理想の財布をつくってあげること。もちろん、プロトタイプではあるが、現実に物をつくり出す。
私は、中学生の女の子とペアを組んだ。私は、”彼女の”理想の財布をつくってあげる。彼女は、”私の”理想の財布をつくってあげる。このワークショップの素晴らしいところは、お互いに相手の理想の財布を自分でつくってあげることだ。
実物を見てもらった方がわかりやすいと思うので、プロトタイプの現物の写真を添付する。
これが、”私の”理想の財布。
名付けて、
“Money or Happiness wallet”
閉じている時には、でっかい財布みたいな印象。
開くとこんな感じ。
現金やカードを収めるポケットがある。と同時に、ロール式のピアノが収納されている。
ピアノとして使用する時は、こんな感じで横に開く。実際は、もっと横にびろーんと広いて鍵盤のように使う。
この財布の実際の使い方は、こんな感じ。
例えば、コンビニで買い物をする時。
品物を持ってレジに行く。私は品物を店員さんに渡す。店員さんは言う。「1,080円です」と。私はこの財布をびろーんと広げて、店員さんに尋ねる。
「Do you want Money or Happiness?」
もし「Money」と答えれば、私は現金やカードで代金を支払う。
もし「Happiness」と答えれば、私は鍵盤を広げ、ピアノで歌を歌う。”その人のために”歌を歌う。相手はとてもHappyになる。私もHappyになる。
そして私は、現金やカードで代金を支払うことなく、品物を手にして、コンビニを出ていく。めでたしめでたし!
まぁ、実際にこれをやったら、いわゆる「万引き」になるのかもしれないけど、これが”私の”理想の財布であり、”私の”理想の買い物の仕方である。
Money or Happiness?
この質問は、”私の”重要な価値観を表現するキーワードである。
ただ、このキーワードは、ワークショップのはじめの段階では、顕在化していなかった。私は単に「グランドピアノを持ち歩きたい!」と言っていただけだった。
約2時間の間で、このキーワードを顕在化させ、それをもとにプロトタイプの財布をつくってくれたのは、私とペアを組んでくれた中学生の女の子だ。
ものすごーく、幸せな体験だった。
“私の”重要な価値観に気づけた上に、”私の”理想の財布が私の目の前に出現したのだ。それもたった2時間で。これまでに一度も見たことのない。自分オリジナルの財布。
なんて素敵な贈り物なんだろう…
私は、彼女に感謝した。ものすごーく単純に感謝した。
ちなみに、これは私がつくってあげた”彼女の”理想の財布。
まるで花のように開き、たくさんのカードが色分けされており、閉じるとカードサイズになる。表面はスマホになっている。どこに行く時にもこれ一つで用が足りる。シンプルでイージー。
彼女はこの財布を見て「欲しい」と言ってくれた。
すごく嬉しかった。
もしかしたら、これらの添付写真を見ただけでは、その感動は伝わらないかもしれない。だって、見た目はただの折り紙工作だもんね。
でも、この折り紙工作は、相手のニーズや価値観をよく知った上で、つくってあげたプロトタイプである。そして、自分のニーズや価値観をよく知ってもらった上で、つくってもらったプロトタイプである。
ただの折り紙工作のようでいて、お互いにとっては、この世で唯一無二のその人オリジナルの財布であり、自分オリジナルの財布である。
このワークショップを体験して私が素直に感じたことは3つある。
1. 他人に喜んでもらえるものを自分でつくり出せるんだ!という喜び
2. 自分の理想の財布を他人につくってもらえた喜び
3. 理想の財布の根底にある、”私にとっての”理想の買い物の仕方や重要な価値観に気づけた喜び
このワークショップが全編英語で行われることもなかなか良いです。
お金か幸せか?
なんて言うの、日本語ではちょっとこっぱずかしいですもんね。だから、どうしてもあーだこーだの前置きを付けたり、婉曲な表現をしてしまいかねない。
でも、英語だと語彙力がないから、ストレートトークするしかない。こっぱずかしさを飛び越えて、自分の素直な気持ちで対話するしかない。
その結果、自分の思いを相手にストレートに伝える力が生まれる。相手の思いをストレートに掴む力が生まれる。
デザインシンキングによるプロトタイプづくり。
すごくオススメです。
一度、ぜひお試しあれ!
私も、企業研修や経営コンサルティングの実務の中で、デザインシンキングによるプロトタイプづくりを取り入れよう、と改めて思いました。
言葉や数字で対話することも大切ですが、
“誰もの目に見えて、誰もが手に取れる物をこの世に生み出す、創り出す”
ということは、さらに大切だなぁ、と思います。
なんせ、現物があれば、いろんな人に見てもらえるし、手にとってもらるし、試してもらえる。そしたら、具体的な改善点を教えてもらえるから、即座に新しいプロトタイプを生み出せる。どんどん具体的でどんどん良いプロダクトが創り上げられていく。
そして何より、
うれしい!たのしい!大好き!
(ドリカム風)
という感情の高ぶりがあります。
自分もそうだけど、相手も、周りの人も。みんながお互いのHappyに向かって貢献しあえるようになる。
いやー、誰かのためのプロトタイプづくりって、ほんと楽しいです。
なんで、こんな楽しいこと、学校で学ばなかったんだろうなぁー
不思議すぎます。
TAKU &sing