【一日一職】塾講師(塾長)

近々、自分の塾を開くSさんは、まずはじめにこう言った。

「小中学生の子どもたちのよりどころとなる環境をつくりたい」

Sさんによれば、「勉強嫌いの子が勉強嫌いを克服するためには、まず自己肯定感を取り戻すことが大切」で、そのためには「勉強のやり方を教える以前に、子どもたちが安心感、繋がり感を持てる環境をつくることが大切」だという。

Sさんがつくろうとしている塾は、単なる学習塾ではない。

「学童と学習塾を足して二で割ったような塾をつくりたい」

Sさんがこれから開く塾の目指す姿は、どうやら新しいタイプの塾のようだった。


職業:塾講師(塾長)
氏名:Sさん(男性・20代)
(前職)一般企業勤務を経て学童保育士など

どんな仕事?

塾講師とは、「自立できる子が育つ環境をつくる人」である。

これから私が開く塾は、学童と学習塾を足して二で割ったような塾をイメージしている。

「どうせできっこないし」と諦めて勉強嫌いになっている子どもたちが、安心感、繋がり感を得て、自己肯定感を持てるようになる。物事をネガティブではなくポジティブに捉えられるようになり、自ら考え、やり方を工夫できるようになる。勉強も仕事も遊びも、自発的に挑戦できるようになる。

そんな、子どもたちのよりどころとなる環境をつくっていきたい。

きっかけは?

塾講師以前に、教員を目指したきっかけは2つ。

①中学生の時に学校に馴染めず、誰にも相談できずに悩んだ。その経験から、学校に「本音で話せる大人がいたら…」という思いを抱き続けていた。

②高校の時に小学生のバスケットチームのコーチをする機会があった。それを見た人から、「おまえ向いてるから、絶対、教員になれ」と言われた。

これをきっかけに「教員を目指そう」と思い、教員免許を取得したが、教員採用試験には合格できなかった。やむなく一般企業で働くことになるも、この環境では「自分らしく生きて行くことはできない」と思い、1年半で退職。学童保育士や発達障害サポーターとして働きながら、学校教育の現場に関わる機会を得た。

その時、「この環境で、ほんとうに自立できる子が育つのか?」という疑問を持った。

教師1人に対して生徒30〜40人。事務作業等もあり教師は忙しい。これでは一人ひとりの個性に目を届かせることはできそうにない。また、社会経験がなければ、本質的な指導もできそうにない。さらに、生徒一人ひとりの個性を引き出し、やる気を高めるようなノウハウ(心理学やコーチングなど)も活用されていない。

この経験をきっかけに、「学校教育の外で、自立できる子が育つ環境をつくる」というビジョンを抱くようになった。そこから、独立できそうな仕事を探し続けてきた。仕事で無理をして身体を壊すこともあった。つらい経験もあったが、その経験もあったおかげで、今年、自分の塾を開講する機会に恵まれることになった。

子どもに勧める?

子どもがいないのでわからないが、何を職業にするにせよ、ビジョンを持っているのであれば、できることからコツコツやればいい。諦めず、壁を乗り越え、前に進み続けたら必ず何とかなる。助けてくれる人が出てくる。

大切にしていることは?

自分を大事にすること。自分を大事にしないと、他人を大事にできない。自分を大事にすることは、自己中心ではなく、他人を大事にすること。

自己中心とは、周囲の目を気にすること。「よく見られたい」とか、「認められるような結果を出したい」と思い、行動すること。周囲の目を気にすることは、一見、他人のことを考えているようだが、実際には自分のことしか考えていない。かと言って、自分を大事にもしていない。どこかにいる理想の自分を追い求めて、いまの自分を否定しているだけ。「このままじゃいけない」とできない自分を責めているだけ。自分のマイナスを見つけてそれをエネルギーに変えているだけ。ある程度までは、マイナスをエネルギーに変えることで進んでいけるが、それは必ずどこかで燃え尽きる。これでは、自分を大事にできない。自分を大事にできなければ、他人を大事にできない。自分をないがしろにしていたら、何もうまくいかない。

子どもたちも、自分を大事にする人になって欲しい。自己肯定感を持って欲しい。挑戦できる人になって欲しい。そのためには、安心感、繋がり感を持てていることが重要になる。子どもたちにとって、よりどころとなる環境をつくっていきたい。

大変なことは?

子どもたちに対して、自分の考えを押し付けないように接すること。待つこと。答えを教えないようにすること。

食っていくために工夫していることは?

塾の開講はこれからなので、まさにこれから試行錯誤していくところ。

一方、ありがたいことに、塾の開講を支援してくれている方のもとでも仕事をさせてもらっている。

なお、もともとは、いきなり自分で塾を開くことは想定していなかった。資金的余裕と経営ノウハウ、そして時間的余裕が必要だと思っていた。だが実際には、それほど資金がかかるわけではない。経営ノウハウは、やりながら身につけていけばいいし、塾の開講を支援してくれている(経営者の)方から学ぶこともできる。基本的には、塾に注力できるので、時間的余裕もある。

こういう経験からも、ビジョンを持っていれば、必ず実現できると信じている。

Sさんにとって塾講師とは?

教える人、というよりは、寄り添う人。

塾講師、塾長というよりは、近所のおっさんのような存在でありたい。

子どもと何気ない挨拶や会話を交わしたり、「どうしたらいいと思う?」と子どもを信じて聞いてみたり。

以前、友人が自作のドラムをつくってくれたことがあった。それを見た子どもたちが我れ先にとドラムを叩きだした。誰がこうしなさいというのでもなく、子どもたちが自由にやりたいことをやっている。夢中になっている。

そんな風に、子どもの目が輝き出す瞬間を見られたら嬉しい。そんな環境をつくっていきたい。


教えるのではなく、寄り添う。
指示するのではなく、やりたくなる環境をつくる。

次世代リーダーを輩出していく上で、非常に重要な姿勢や考え方であると感じた。

どっひー&sing

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