【一日一職】経営企画担当者

インタビューの冒頭。Nさんはこう言った。

「いまの仕事の話をした方がいいですか?」
「それとも、前職や前々職のベンチャー企業での話をした方がいいですか?」
「ベンチャー企業の時の話の方が絶対面白いと思うんですけど…」

Nさんによれば、前職のベンチャー企業での仕事は「自分の人生をかけよう!」と思える仕事だったと言う。

だが、いまは別の仕事をしている。

何度もドロップアウトしながらも、自分のやりたいことを追い求め続けるNさん。

その原動力は、「人の人生の選択肢を増やしたい」という強い気持ちだった。


職業:経営企画担当者
氏名:Nさん(男性・30代)
(前職)複数社を経てベンチャー企業役員

どんな仕事?

いまは、非上場の製造業の会社で経営企画の仕事をしている。

経営企画は、「何かを変える仕事」である。

会社の中には、維持する仕事、変える仕事、つくる仕事がある。経営企画は、いますでにある「何かを変える仕事」である。具体的には、社内の業務改革、システム導入、人事制度構築、中期経営計画策定などの業務を行なっている。

ただ、個人的には「何かを変える仕事」よりも、「つくる仕事」の方が好き。もっと言えば、「何かを変える仕事」は、まさに仕事だと捉えているが、「つくる仕事」は、仕事というよりも趣味という感覚を持っている。

「何かを変える仕事」は、社長や上司が指し示した方向に向け、社内外の人々の利害を調整しながら実行していくこと。自分で旗を立てる訳ではない。一方、「つくる仕事」は自分で旗を立てること。立てた旗に人が付いて来てくれること。世の中になかったものが新しく生まれること。

ベンチャー企業2社での事業立ち上げ経験から、自分がゼロからイチを「つくる仕事」が好きだということがわかった。なので、いまは経営企画で「何かを変える仕事」に携わっているが、将来的には「つくる仕事」にも携わっていきたいと考えている。

きっかけは?

31歳の時、知り合いに声をかけてもらい、ベンチャー企業の役員(共同経営者)になった。この時、「自分の人生をかけよう!」と思える仕事に出会った。しかしながら、家族の事情でその仕事を1年半で辞めざるを得なくなった。生活する場所も東京から大阪に移った。その後、しばらく仕事をしない(できない)状態が続いた。引き続き、大阪で生活する必要がある。家族を養う必要もある。そこで、1年ほど前に知り合いのツテで、いまの会社に経営企画担当として入社した。

経営企画担当として入社することができたのは、過去の職歴(システムエンジニアや経営コンサルタント)での経験によるところが大きい。

子どもに勧める?

子どもには、「好きなことをやりなさい」「責任を持ちなさい」と言いたい。また、「大学受験は頑張りなさい」とも言いたい。いい大学に入ったからどうということはないが、社会で働く上での選択肢は広く持っておくことは大切だと思う。

大切にしていることは?

人の人生の選択肢を増やしたい。

選択肢のない状況が一番不幸だと思う。

これを強く感じたのは、20代後半。前々職のベンチャー企業でマネージャーとして働いていた時。東南アジアの国で、ある病気の治療プロジェクトを自ら立ち上げ実施した経験が大きい。

当時、その国では、ある病気の人が多いという調査結果が出ていた。日本では比較的簡単に治療できる病気なのだが、その国ではその病気を治療できる医者が少ない。治療費が高く、富裕層しか治療を受けられない。つまり、所得の高くない人にとっては、その病気を治す、という選択肢がなかった。

そこで、日本の大学の医者の方にボランティアでご協力いただき、その国でその病気の治療プロジェクトを立ち上げ実施した。その時、ものすごい行列ができて、ものすごく感謝していただいた。あるお母さんは、「神様や!」と泣いて喜んでくれた(実際に手術をしたのは医者の方であり、私は何もしていないのですが…)。

その経験が忘れられず、「人の人生の選択肢を増やしたい」「高齢者、障がい者、子どもたちなど、ほんとうに困っている人たちの役に立ちたい」「世の中にまだないものをつくりたい」という気持ちを強く持つようになった。

大変なことは?

これまでの人生は、ドロップアウトの連続だったので、大変だったことばかりです(笑)。

学生時代はJリーガーを目指していたが挫折し、経営コンサルティング会社にいた頃は他人と自分を比べてしまって鬱(うつ)になり、その後に入ったベンチャー企業も1年も経たずに退職し。30代前半で、ようやく「人生をかける仕事に出会えた!」と思ったら、家族の事情でその仕事を1年半で辞めざるを得なくなり。

いまも、家族を養っていくために働いています。でも、仕事とはそういうものだと思っています。

食べていくために工夫していることは?

いまの仕事をしていること自体が食べていくための工夫であり、家族を養って行くための工夫である。

ただ幸い、前職でお世話になった方から「いつでも戻って来いよ」と言っていただいている。一方で、いまの会社の社長にも、私のこれまでの事情や私のやりたいことを理解してもらえている。

1〜2年後には、平日はいまの会社で働き、土日は前職の会社で働く、という働き方をしている可能性が高い。一見すると休みがないように見えるかもしれないが、土日の仕事(=前職での「つくる仕事」)は私にとっては遊びや趣味のような感覚の仕事なので、苦にはならないと思う。また、いまの会社は大阪、前職の会社は東京と距離が離れているが、Skypeを使えば遠隔で関わることもできるので移動の必要もない。

しっかりと家族を養って行くための仕事をしながら、自分の好きなこと、やりたいこともやっていく。

「何かを変える仕事」をしながら、「つくる仕事」もしていく。

一見両立しづらそうなことも、意志と努力と工夫次第で何とでもなると思う。

特に、自分が困った時に「うち来いや!」と言ってくれる人が何人いるか?がすごく大切だと思う。

私も、人が困っている時に「うち来いや!」と言ってあげられる人でありたい。

「肩書きをとった時に、人に対して何ができるのか?」をつねに意識し続けていたい。

Nさんにとって経営企画とは?

あくまでも旗を立てるのは社長や上司である。経営企画は、その実現に向けて「何かを変える仕事」である。


「人の人生の選択肢を増やしていきたい」
「選択肢のない状況が一番不幸だと思う」

Nさんのこの言葉は、私の心に深く響いた。

人は、選択肢を持つことで、未来への希望を持ち続けることができるのではないだろうか。

どっひー&sing

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