もう10年くらい前になるだろうか。とある食品メーカーで新規事業アイデア創出ワークショップを実施していた時の話だ。
会議室に集まっていたプロジェクトメンバーは15人ほど。各人から、自社の将来ビジョン実現のために、自社の強みを活かしてどんなことができるか?についてのアイデアをプレゼンしてもらっていた。その時、ある一人の社員の方から、こんな言葉が出た。
「うちの社員は、うちの商品が入っている食品を食べないですからね」
「うちの商品が入っていない食品を食べるのが一番いいんです」
「だから、自分でも極力うちの商品が入っている食品は食べません」
「家族にも、できるだけ食べるな、と言っています」
「うちの商品は必要悪なんですよ」
そのメーカーは、食品添加物をつくっている。
私は、その言葉を聞いた時、「えっ?」と驚いた。ショックだった。そして、怒りを感じた。
自分の会社の商品を食べない?
家族にも勧めない?
それって、どういうこと?
その商品って何?
もし村で商売していたとしたら、そんな商品を売る?
自分で食べない。家族にも食べさせない。そんな商品を近所の人たちに売るか?
そんな商品を売っているあんたの会社はなんや?
そもそもその会社に勤めていながら、その商品を必要悪と呼んでやり過ごしているあんたはなんや?
と。
もちろん、私は面と向かってはそんなことは言わなかった。なんせ仕事中だ。だが、心の中ではそんなことを瞬間的に思っていた。
一方で、他のプロジェクトメンバーの様子を伺う。
「そうそう」と言葉で同意している人がいる。あるいは、言葉は発しないまでも、頷いている人がいる。少なくとも、そこにいたすべての人が、「私はあなたの意見を否定しませんよ」という顔をしていた(と記憶している)。
私は、猛烈な悲しみを覚えた。
必要悪ってなんや?
と。
仕方がない、ということか?
諦めるしかない、ということか?
自分で自分たちの会社のやっていることを悪と認識しつつ、当の本人がそれを是認している。
いや、是認しようとしている。
おそらく、ものすごい心の葛藤があるのだろう。
誰もが、それでいいんだという顔はしていなかった。
一方で、それは仕方がないことですね、と言って欲しそうでもあった。
私は、あえて何も言わなかった。
いや、何も言えなかった、というべきかもしれない。
その時は、社員の方々の意見をそのまま受け入れ、次のプレゼンに進んでもらった。
だが、その時から、私の中には、妙なしこりのようなものが残った。
これで良いんだろうか?と。
家族のことと会社のこと。
社会のことと経済のこと。
この両者は、相反するものではないはずだ。
必ず両立することができるはずだ。
どうすればいいんだろうか?
何をすればいいんだろうか?
何をどう考えれば、この両者を両立させることができるんだろうか?
いい経営とは何だろうか?
と。
この話の続きは、またいつかどこかで書きたいと思います。
では本日も、よい一日でありますように♪
TAKU &sing
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